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現場漁師の声

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漁師のしごと・くらしを知るセミナー講演要旨

漁師のしごと・くらしの紹介

有限会社金城水産 網元 窪川敏治 さん

自己紹介

生まれ・育ちは東京で、30歳まで暮らしていた。海洋系の大学を卒業後学習塾に勤め、その後漁業に転職した。定置網漁は権利がないとできない漁業で、いずれ譲り受けるという話があったので思い切って石川県に移った。大型定置網の網元としての仕事の傍ら、小型船舶教習所の学科教員をしたり、子どもたちにおさかな教室など開催している。

金城水産のあらまし

就業場所は石川県加賀市で、外浦に面し福井県との県境。大型定置網漁は、複数の仕掛けをそれぞれあげて帰港する。地元の橋立漁港にも出荷するが、漁獲量が多いときは福井方面や小松市、金沢市の市場にも出荷する。また富山湾側にある氷見市場は、こちら側と入る魚や量が違うのでチャンス。氷見にブリが揚がっていない時にこちらから持って行ってあげると、高値が付き儲かる。沿岸漁業は出荷先をいろいろ工夫できる。沖で魚を獲っている時でも市場から電話がじゃんじゃんかかってくるので、出荷調整し、出荷先を決めて売り上げをできるだけ高くするのが網元である自分の仕事。
大型定置網漁、略して大敷といったりするが、仕掛けが大きいので船頭や操縦する人など、チームで作業する。操業時間は日帰り。陸が見えるところで作業するのが定置網漁の特徴。定置網は待ちの漁業。夏、水温が魚に適さないほど高くなってしまうと、最盛期で10トン獲れる網でも100kg程度しか魚が入らない日もある。海の環境の変化に大きく左右される漁法で不安を感じる人は、底引き網のような積極的に魚を捕まえにいく漁業の方が向いているかもしれない。
網の仕掛けは、大型定置の身網の縦が200間(=300メートル)、幅が40間(=60メートル)、道網は300間(=450メートル)くらい、で、野球場や陸上競技場もすっぽり入る。水深は30~35メートルの深さ。この仕掛けをキレイに設置するのが最大の仕事。バランスが悪かったり、破網した箇所があったりすると何もとれない。

1日の流れ

魚が多いときは、深夜1時に出漁。漁師は朝が早いイメージがあるが、市場に合わせているだけ。漁師自身は普通に仕事をしたいが、「朝7時に魚を持ってきて」と言われたら、1時に出て網を起こして5時半くらいに出荷しないと間に合わない。魚は夜網に入ると思うかもしれないが、比較対象実験ができないので正直分からない。結果、市場に合わせざるを得ない。水揚げが多い時期は1日に2、3回出漁したりする。
橋立は珍しく夕競りがある。水揚げが少ない時は夕競りに合わせて出漁する。最初から夕競りだったらもっと遅く出漁しても良いはずなのだが、大漁だった場合を期待して朝早く出ているというのが本音。作業時間も水揚げ量次第。漁師は夜仕事をして昼は寝ているイメージかもしれないが、昼は昼で近くの温泉に行ったりできるので寝る人は実際少ない。
氷積は100キロ揚がったら30キロの氷で締める割合で持っていく。レバーで操作する。船底のハッチ(魚を放り込むところ)に2~2.5トン氷を入れておく。ハッチは最大10トン魚を積める。高い魚や鱗が取れやすい魚は小分けにしてタンクに入れて大事に持って帰る。その時はカゴ1つ35キロ分の氷を入れる。作業は一瞬なのでそんなに重くないし実際は2人かかりで作業する。
出港の時間は星がきれい。夜光虫とよばれるプランクトンが増えると海は青く光りすごくきれい。漁師になった人しか見られない。感動的な景色。網起こしとは魚をとること、網を絞っていくこと。テンションがかかっていないときは手でやれる。重くなったらウインチでやる。魚を寄せ終わったらいよいよ魚を獲る。水揚げ作業は魚が多いときは直径1メートルほどのタモを入れてクレーンで揚げてハッチに入れる。80キロくらい入るが、一度にあまり多く入れると、下の魚がつぶれるので少しずつとる。多いときは100回位すくい続ける。
移動中は、下っ端漁師はカゴを洗ったり雑用を行う。避けては通れない仕事なので、それが嫌なら漁師はやれない。定置網にはいろいろな魚が入るので、選別し大きさを揃え重さを計ることも仕事。競りが始まる前に出荷する。仲買人は魚をチェックして魚を選ぶ。1箱に魚が4キロ、氷が1キロなので計5キロの重さがある。
1年の流れについては、漁期は4月から11月。冬場は大時化なので網をあげてしまう。12月半ばから1月半ばに約1月間休みがあり、このために仕事をしているようなもの。このようにメリハリの利いた経営体も多々あると思う。再び網入れするには1か月ほどかかる。

まとめ

「獲る」、「運ぶ」、「加工する」、「売る」のすべてが漁業。お役所が力を入れているのが地産地消や6次産業化。ただ私たちの作業は見てのとおり、「加工」や「売る」ところはやっておらず、「獲る」、「運ぶ」仕事まで。これが理想形ではないか。「加工」、「売る」ところまでやると乗組員が疲弊する。「獲る」、「運ぶ」で終われればいい。流通の主導権を握りたい。実際、我々の魚は京都・大阪の料亭にいく。首都圏に依存してやっている。その他の業務として、網の設置、回収作業。それぞれ1か月かかる。修理する仕事もある。ロープを作ったり、網を修理したり。船を修理したりするのもある。

漁師って実際どうなの?

体力面では機械化が進んでいるので、力を入れる勘所が分かれば楽になる。船酔いしやすい人には厳しい。漁業の災害発生率は全産業平均の7倍といわれるが、厳しいと思うかどうかは人それぞれ。最初は指が筋肉痛で固まって大変だったが、筋肉がついてくるので大丈夫。関節の持病がある人は再発するし、持病の悪化は労災対象外なので漁師にならない方がいい。
精神面という点では、漁業では何があっても「自然が犯人」な点がいい。「人のせい」は絶対ないので心が健康になる。日々出荷して終わるので翌日へ持ち越したり残業がない。和気あいあいしているのがいい。ただし方言の粗暴さは厳しい。慣れればいいが、びっくりする。昭和的な上下関係も残る。
収入面は基本給+水揚げ手当+役職手当。給与は都会より安いものの、家賃は東京の駐車場代くらいで食費も減る。使えるお金は都会とそんなに変わらない。生活面では通販があるので買い物は困らない。温泉にも入れる。深夜の仕事がある。車は必要。未婚者は女性との出会いが少ないというか、若い女性が港にいない。

漁師の転職に向けてメッセージ

  • なぜ仕事をしないといけないのか、なぜ転職するのか、なぜ一次産業なのか、なぜ漁業なのか、なぜその漁法なのか、すべてに対して落とし込みできないとだめ。
  • 体に不安がある人はやめた方がいい。
  • 船酔いについては、漁船の揺れを体験してみてほしい。漁船の揺れは独特。体験乗船の際のポイントとして、船のきれいさについても見てほしい。ちゃんとしているところは船の中が整理整頓されている。整然としている船に勤めたほうがいい。
  • 我々は「海が相手」、「魚が相手」のフィッシャーマンではなく、「魚は商品」、「相手は人」のビジネスマンであると考えるべき。
  • 船舶免許を取得すると関連知識をいろいろ得られるのでとっておくとよい。
  • 他業種経験者は世間一般の見方ができる点が強み。
  • 道具に慣れるまで、身のこなしが良くなるまで、ケガはつきもの。慣れるまでは注意。
  • 知らないことばかりで覚えることが沢山ある。教科書もない。漁業は実はデスクワークより頭を使う。
  • 何があっても1年我慢しましょう。1年我慢すれば流れがわかる。3年で考えがわかってくる。
  • 網の中にいるのは魚ではなく金。一人前でなく一人前半、二人前をめざし、経営感覚を持ってほしい。

新人漁師インタビュー

河村洋平 さん

自己紹介

現在31歳。東京出身。漁師になって1年と少し。大学卒業後会計事務所に2年ほど勤めたのち退社しアルバイト、飲食店勤務を経て、漁師の道へ。

Q. なぜ漁師になろうと思ったのか?
A. 将来的に田舎で暮らしたかったし、両親が石川県出身だった。石川県の仕事を調べていて漁師にたどり着いた。魚を獲る行為がカッコいいと思った。2015年に漁業就業支援フェア(以下、フェア)に参加し決まった。
Q. フェアにはどれくらい勉強して臨んだのか?
A. 事前にインターネットを見たり本を買って、ある程度調べた上で参加した。
Q. フェアの面接ではどんな質問をしたのか?
A. 「実際の生活はどうなのか」とか、給与面については踏み込んで聞いたと思う。
Q. ご両親は友人の反応は?
A. 両親は驚いていたが、「好きにやれば」と言われた。友人からは驚かれた。「カッコいいね」という友人もあったし、心配の声もあった。

Q. 実際に漁師になるまで漁業に関連する経験は?
A. ほとんどなかった。釣りもしたことなかった。去年1回釣りをしてみたが、すぐ飽きて辞めた。
Q. 船酔いは?
A. もともと乗り物には強い方なので、乗る前から大丈夫だと思ったし、実際全くなかった。ただ、酔う人はものすごく酔っている。体調のコンディションの影響はある。前日のアルコールが残っていると船酔いがあるが、ほとんどない。
Q. 体験乗船は?
A. 体験乗船には参加した。1日の作業の流れを見せてもらいがら乗せてもらった。
Q. 苦労したことは?
A. 最初は相手が何を言っているか分からない。専門用語がわからない。教えてもらうものの、覚えることが多くてわからないので苦労した。船の上で毎回聞きながら覚えていく。聞かないと覚えない。
Q. 体力面では苦労しなかったか?
A. もともと体力には自信があったが、実際やってみると「想像していたより楽」と思った。体を使う部分はあるが、思ったほどきつくない。
Q. 指の筋肉痛にはならなかったか?
A. 最初の頃は指先が固くなったが、半年くらいで慣れてきた。
Q. 魚の名前を覚えることは大丈夫だったか?
A. 網にはいろいろな魚が入るが名前がわからない。教えてもらいながらやるが、似た魚もいる。見分けがつきにくい。毎回間違えながら覚えていった。検索して自分で調べたりもした。
Q. 仕事内容は?
A. やることは2年目もかわらない。固定された位置で作業するが、臨機応変にそれぞれ判断して動く。
Q. 普段のお休みの過ごし方は?
A. 漁期は毎日海に出るが、出漁できない日がお休み。直前まで休みになるか分からず、その場で決まる。休日は家にいることが多い。
Q. 長い休みのときは何をして過ごす?
A. もともと実家が関東なので、帰省し半分くらいは実家でゆっくりした。
Q. 都会と田舎の生活の違いは?
A. 田舎は車社会で基本的に移動はどこに行くにしても車。

Q. 物々交換の習慣は未だに残っている?
A. 傷が付いてしまった魚やサイズが小さい魚は乗組員で均等に分けるが、量が毎回尋常でない。食べきれないので、同じ船の人に紹介された農家さんにあげている。すると農家さんが米や野菜や果物をくれたりするので食費はかからない。
Q. 漁業の魅力は?
A. 自然の中で仕事をする点。船から眺める朝日を見るのが大好き。空気の状況で毎日表情が違う。星もきれい。自然が好きな人にはいいかもしれない。
Q. 漁師になりたい人へのメッセージ。
A. この仕事を始めるときは周りから反対されることは無かった。やりたい気持ちがあれば絶対できる仕事。個人差はあるがどんどん情報収集し、突き詰めればちゃんとできる。

(2017年6月15日)