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研修生の体験談

研修生の体験談

今村 大志さん

漁師の育成を目的とする京都・宮津市「海の民学舎」の生徒である今村大志さん(27歳)は、奈良県出身。元は小学校教師で「漁師になるつもりはまったくなかった」という彼は、いま「漁師の宿」を開くという夢のために、昨年から研修に臨む日々だ。

今村大志さん。出身である奈良県にいるころは、海といえば「和歌山」で、じつは京都の海には行ったことがなかったそう。

■「漁師」を武器にして
夢をかなえたい

自主研究として、京都府の海産物を使ったメニューの開発を行うために、宮津市内の料亭で聞き取りをする今村さん(右手中央)。

子供のころから自然が大好きだったという今村さん。将来は「海のそばで仕事がしたい」と考えていた。
大学卒業後は念願かなって、京都府・丹後半島に位置する京丹後市の小学校教師となる。美しい海を満喫しながら働く日々だったが、次第に新たな夢を持つようになった。
「教師の仕事は楽しかったけれど、どこか縛られている感じがしていました。もともと接客の仕事が好きだったので、ここで漁師の宿を開きたいなあと思い始めたんです。宿を拠点に多くの人々に海の魅力を伝えたり、子供たちにさまざまな体験をしてもらえたらと考えるようになりました」

教師生活も3年目に入ったころ、宮津市内に開講した「海の民学舎」が、漁業研修生を募集するという情報を知った今村さんは、ひらめいた。「宿を営むのに『漁師』は『武器』になるんじゃないか」。主である漁師が自ら獲ってきた魚を食べてもらう。「『美味しい』という最高の説得力がありますよね(笑)」

■太陽とともに暮らす。
海と生きる日々は魅力的

伊根浦漁業大型定置網実習を行う、海の民学舎の生徒たち。

「漁師」を目指す事を決めた今村さんは「海の民学舎」に入学、同期生10名と研修をスタートした。「それまで漁師になろうなんて、全然考えたことがなかった」にも関わらず、毎日の授業は「すごく面白いことばかりでした」。

「たくさんの魚を見られるのはとても楽しい。それに漁師さんたちは、とにかくカッコいい!」。波の様子、潮の速さ、風向き。見ただけで判断できる。「漁師さんというと、怖いんじゃないかって思っている人が多いけれど、みなさん、面倒見のいい方ばかりで、ていねいにたくさんのことを教えてくださいました」。

もちろん楽なことばかりではない。「船酔いもひどかったし、ひとたび船に乗れば命にかかわる現場で、1秒たりともぼんやりしているわけにはいかない。漁業の厳しさも感じています」。

けれど、今村さんは海と生きる日々に魅力を感じている。
「底びき網漁は、網を入れたり上げたりしながら30時間も沖に居続けるんですよ」。続く言葉は「大変です......」かと、思いきや「船上で移り変わる海の風景に感動しますよ!」

「漁師は天気に左右される仕事。魚が獲れるときは獲って、休むときは休むというメリハリが僕は好きです。そして、明るくなったら仕事をスタートし、暗くなったらおしまい、と太陽とともに日々を過ごす。まさに『人間らしいライフスタイル』をおくれる素晴らしい仕事だと思います」 「それにおいしい魚がいっぱい食べられる!」と今村さん。最高の漁師めしは「船の上で、獲れたての、いろいろな魚を鍋に入れて煮付けたもの」だそう。「最高にうまいです。味付けは醤油と砂糖だけなのに。陸でやっても、ああはならないんだよなあ(笑)」。

■さまざまな漁法を学んだこと
そして、仲間たちとの絆が強み

伊根湾に沿って建ち並ぶ「伊根の舟屋」。 1階が船のガレージ、2階が居間となった独特な建物。今村さんの宿兼新居になる予定。

海の民学舎では、1年目の研修期間は、定職についての仕事は禁止されている。毎朝4時から、近くの朝市のアルバイトで収入を賄う生活は大変だったが、京都の海洋環境、水産生物などを学び、府内各地で底びき網漁、定置網漁、釣・はえ縄漁などさまざまな漁法を学ぶ授業は「多角的な視野を持つことができる」貴重な経験だったという。「ひとたび就漁すると、それ以外の漁業を体験する機会は滅多にありません。僕たちは京都の海全体のことやいろいろな漁法を学ぶことができた。このことは漁師さんたちからもうらやましがられるし、今後、自分の強みになると思います」。

宿舎での共同生活もよい経験だったという。「意見が違って時にはトラブルもあったけど、その分結束は固いです。そして、卒業後は、各地で漁師になったみんなといろいろな連携もできる。心強いですね」

2年目は宿舎を出て、伊根地区にある定置網漁業の会社で研修を行うことに決めた。住まうところとして伊根はとても魅力的な地域だと感じたからだ。個人漁師ではなく、会社に入ることを選んだのは、横のつながりを強くしたいという思いもある。 「1人前の漁師を目指すのが当面の目標ですが、それとともに地元のみなさんと交流を深めて地域活性化の取り組みや、発信をしていきたいですね」。

実は、今村さんは8月に結婚を予定している。「4月には奈良で美容師をしている彼女を呼んで一緒に暮らしてもらおうと思っています」。まだ、どこか移住をためらっている彼女のために、宿にはヘアサロンも作って地域に溶け込めるようにするつもりだ。「実はまだこのことは秘密。これから彼女にプレゼンなんです(笑)」と今村さん。もちろん「プレゼン成功、自信アリ!」。漁師を基盤に、オンもオフも充実した毎日を目指す今村さんの笑顔が眩しかった。

※この記事は2016年2月に取材したものです。