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指導者インタビュー

指導者インタビュー

永濱治夫さん(海の民学舎)

京都府宮津市に昨年開講した「海の民学舎」は、漁師を育成するための機関。漁師っていったいどんなことをするんだろう? 漁師になりたくてもどうやったらいいのかわからない。そんな思いを抱く人のためのいわば、「漁師予備校」だ。

永濱治夫さん。「京都府農林水産技術センター 海洋センター」の職員のみなさんが、専門分野の授業を担当するとともに、運営協議会事務局職員が研修生の海の民学舎での生活全般や進路等について指導・助言。

■京都の魅力ある海を舞台に
「一人前の漁師」を目指す

座学中の研修生。講義は幅広くオプションではあるが資格関係も充実。小型船舶、無線技士2級、フォークリフト資格と高いランクの資格取得が可能。

京都北部に位置し、日本海に面した丹後地方は漁業が盛んなエリアだ。
冬のズワイガニで有名だが、近年、漁獲量日本一となったサワラをはじめカタクチイワシ、アジ、カレイ、ブリ類など年間を通して豊富な水産資源に恵まれている。またトリガイ、カキやブリなどの養殖も盛んだ。

しかし、豊富な資源があるにもかかわらず、年々漁師の高齢化が進み、後継者不足で漁村の過疎化が進行。京都の漁業の未来を支える人材の確保が強く望まれていた。

そこで京都府、京都府漁業協同組合、地元市町などにより、2015年に設立されたのが「海の民学舎」だ。海の民学舎運営協議会事務局となる「京都府農林水産技術センター 海洋センター」業務・普及指導部長の永濱治夫さんは「これまで新規就業者の方が、地元に定着できなかった理由のひとつとして、思い描いていていた漁師の生活と実際の生活のギャップがありました。そのずれを軽減するためにも就業する前に、まずは京都の漁業を学ぶ場として、開講されました」と語る。

■さまざまな漁法を体験して
自分に合った漁業を知る

「京都ブランド」に認定された、全国でも例をみない大型のトリガイ「丹後とり貝」の養殖現場での実習。

海の民学舎では研修後は府内に定住し、漁業に従事することを前提に生徒を募集。漁師になるために必要なすべてを学ぶ研修、研修中の生活面の支援、研修後の就業、定住までをサポートし、漁師として京都で生きるための強力なバックアップを行う。 研修は2年間で、授業料は年11万8800円。研修を終えた後、京都府内で5年間漁業に従事すれば授業料は戻ってくる。

1年目は漁業や水産研究のエキスパートによる実習、講義により基礎から応用までの漁業に関する知識と技術を習得する。

実習は、京都府内各地の漁業現場で定置網漁、底びき網漁、釣・はえ縄漁、養殖などを体験する。「さまざまな漁法を幅広く学び、体験することで、自分に合った漁業を見つけ、具体的なイメージを固めてもらいます。また、ひとつの場所ではなく各地で実習を行うことで、将来自分が就漁して、生活する漁村を選択する際の参考になれば、という意図もあります」(永濱さん)

■水産業のすべて、漁業経営を学んで
経営力のある漁師に

水産加工実習。カレイの加工を行う研修生。

講義の内容も実に幅広い。京都の水産生物、海洋環境、漁業制度からはじまって、冷凍保存、水産加工、流通販売までと水産業のすべてを網羅した内容だ。さらには漁業経営、保険融資制度、簿記、IT技術といった授業もある。漁業をビジネスとして成り立たせるためには、漁業技術とともに、漁業経営のノウハウを学ぶことも重要であるという考えからだ。

「漁師として『生計をたてる』ためのスキルを身につけてもらいます」と永濱さん。「実際、京都では単独の個人漁業で生活をしている人は少ないんです。はえ縄と養殖、というように組み合わせたり、販売や加工などの工夫をするといった『経営力のある漁師』を目指してほしいと思います」

また漁村定住を見据えたプログラムも充実。地域との仲間づくり、地元の漁師たちと交流を深める授業も多く、漁師としての具体的な生活イメージをつかみ、移住後に暮らしていくうえで欠かせない「地域との連携」を育むこともできる。

2年目は、漁村に定住して、希望する漁業の現場で長期の実地研修を行う。1年目は定職についての仕事は禁止されているが、2年目は研修先の漁業経営体から給与が支払われる。

漁師に憧れていても知識がなく、土地勘がなく、資金面が不安だったとしても熱意があれば、京都の豊かな魅力ある海をステージに「漁師デビュー」、そして「デビュー後」を応援する体制が整えられている。

※この記事は2016年2月に取材したものです。